理学療法士、学生の視野を広げる発信者ブログ

身体の専門家である理学療法士のブログ!健康に悩んでいる方、新人理学療法士、学生にも読んで頂ける内容。臨床に活かせる知識を記載します

歩く速度はどの程度速ければ良いのか  ~自立の基準値を知ろう③~

こんにちは!理学療法士の嶋倉です。

本日は前回の記事の延長にあたるかもしれません。

歩行が可能となり、杖がいらなくなり、フリーハンドで歩けた!

よし、家に帰れるぞ!と思いがちなセラピストが多くないですか?

いやいや屋外歩行練習もしました、横断歩道も渡りました。

はい、それだけが退院後の生活に必要な速度ではないですよね。

 

公共機関を利用することもあると思います、思いがけず急がなければ

いけないような場面も出てくるかもしれません。

 

今回はそういった日常生活における必要な歩行速度や

疾患をもった方の日常生活を自立している場合の歩行速度等を

研究結果の基準値をもとに紹介していきます。

 

 

①青信号点灯時間と歩行速度の関連

 

・無作為に抽出した横断歩道における必要な歩行速度(50か所)

方法:横断歩道距離と青信号点灯時間を調査、必要な10m歩行時間を算出

結果:9.6秒~64.6秒(0.15m/s~1.04m/s)、平均21.1秒

 

上記の結果からいえることは、横断歩道の歩行速度に関しては

地域や場所により大きく異なることが予想されます。

病院や施設周囲にて横断報道の横断練習を実施して可能だからといって

必ずしも自宅周囲の信号を渡ることが出来るかと問われると難しいものです。

 

しかしだからといって、家まで帰り実施するのは難しく、

さらにいえば外出すれば様々な時間の信号に巡り合います。

そこでさらに1つ追加で興味深い知見があります。

 

 

・某地域における歩行速度を一定した際の信号の渡れる割合(130か所)

方法:ある一定の歩行速度を用いて、青信号点灯時間、横断歩道距離にて渡り切れる割合を算出

結果:歩行速度1.0m/sと設定した場合は点灯、点滅時間内に渡ることのできる横断歩道は98%、点灯時間内に渡ることが出来る横断歩道は全体の91%。

 

このような研究結果も存在している。横断歩道の時間自体は多くは地域によって

差異は大きいが、1.0m/s以上の歩行速度を有していると9割近い信号は渡りきることが

できるという判断が出来ます。1つの基準として考慮しても良いものだと考えられます。

 

 

 ②疾患別実用的歩行速度

 

・脳血管障害による片麻痺者(退院時100m歩行獲得した者94名)

方法:退院時に杖、装具用いて100m歩行速度を計測

結果:独歩が可能な者は100m歩行速度が4分以内に限られた。さらに1km以上の連続歩行が可能な者は概ね100m歩行時間が4分以内(0.42m/sec)

 

との報告があります。急性期病院などではなかなか長距離歩行訓練は困難な場合が多いですよね。長距離歩行が可能であり、独歩を目指すのであればまずはこの歩行速度を基準にしても良いかもしれません。または0.42m/secあれば長距離歩行も今後としては可能になる可能性が高いという予後予測にも利用可能かもしれません。

 

 

・基本的ADL自立している65歳以上高齢者の歩行速度の予測(736名)

方法:初回評価より6年間追跡調査を行い、歩行,食事,トイレ,入浴,更衣,のADL項目の障害発生度の予測について検討

結果:前期高齢者(75歳未満)最大歩行速度が男性は1.82m/sec、女性は1.71m/sec以上、通常歩行速度は男性は1.26m/sec、女性は0.91m/secであれば将来的に自立した生活が送ることが可能となる。後期高齢者(75歳以上)では最大歩行速度が男女ともに1.35m/secであり、通常歩行速度は男性が1.05m/sec、女性は0.88m/secとの報告があります。

 

 

退院する患者さんの生活が将来的にどう変化が生じてくるかの一つに指標として利用可能かと思います。

 

 

 

今回は歩行速度と自立との関連性に関して記事を書かせて頂きました。普段訓練の際でも歩行自立の基準として6分間歩行や10m歩行を測定する機会は多々あると思います。その歩行速度は屋内歩行自立等の基準にしか利用されないことが多いですよね。

ぜひ今回の記事を参考にして、違った視点からも歩行速度に関して評価をしてみてはいかがでしょうか。

 

次回は身体機能を維持するために必要な活動量についての基準を記載します。

 

記事を最後まで読んでいただきありがとうございました。